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高森明勅
2016.1.4 16:19

皇室典範改正に向けて

皇室の存続には皇室典範の改正が不可欠。

今の憲法の規定では、典範の改正はもっぱら「国会の議決」(第2条)
による。

その際、政治家の考え方が重要になる。

そこで参考になる発言を紹介する。

前にも一部引用したが、
前原誠司民主党元代表と萩生田光一内閣官房
副長官の発言だ。

まず前原氏。

「男系男子が望ましいのは一致しても、それなら旧宮家を
皇籍復帰させるかといえば意見が大きく分かれま
す。
抽象的な議論と違って、
実際に生きている方々の人物評価まで
入ってきますから生々しい話
になる。

いろいろな方からご意見をうかがいましたが、ここでは言えないことは
たくさんあります」と。

ここで「皇籍復帰」と表現しているのは勿論、間違い。

対象となるのは、かつて皇族だったことが全くない人たちばかり。

そういう人たちを、皇族との正式な婚姻もなく、
皇室に迎えよう
というのだから、まさに“新規”の皇籍「取得」
という無茶な話。

そもそも、旧宮家系の未婚の成人男子が何人いて、どのような人物
かも知らず、
そのことに興味すら持たないで議論している向きも。

余りにも無責任。

先頃、竹田某氏が大麻不法所持で逮捕、起訴された事実は
記憶に新しい。

次に萩生田氏。

「天皇は男系男子が基本だと思いますが、現実問題として、
それでは将来的にどんどん道が狭まることは確実です。

宮家の跡取りは、ほとんど女子ですよね。

その方たちが結婚して家を出ていかれたら、
間違いなく宮家は
なくなります。

そう考えれば、婿をとる女性宮家もあっていいように思います。
いまは側室を認めろといっても無理でしょうから、そのほうが現実的
です」と。

萩生田氏は安倍首相の側近中の側近とされる。

その彼が、こうした発言をしている点に注目したい。

明治より前は、皇族(皇親)と婚姻しても国民は国民のまま。

それが明治以降、婚姻によって配偶者も皇籍を取得することに。

今の皇后陛下はじめ、妃殿下方も皆様そうだ。

それに違和感を覚える人は、まずいないだろう。

女性宮家に「婿」として入夫される場合も、
正式な婚姻を介している以上、
それと本質的な違いはない。

国民が皇籍を取得できるのは唯一、婚姻による場合だけ。

これまでと同様、そう限定しないと、皇室と国民の厳格な区別は
曖昧になってしまう。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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